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2011/04/15
中期計画の重要性第十講「人事報酬制度と労務管理」10-2
執筆者: staff
成果主義を導入する前に
2003/02/19
<報酬制度の変遷>
 従来の日本企業では、年齢/勤続年数の高まりにつれ給与が上がっていくという年
功序列型の賃金制度が採用されていました。この制度は経験年数の長い熟練労働者が
会社の競争力の源泉であった時代には有効に機能しました。しかし時代の移り変わり
により「年齢が高ければ能力があり、成果を上げるか」というと必ずしもそうではな
くなり、社員の貢献度と給与との間にミスマッチが生じるようになったのです。そこ
で社員が実際に保有する能力の高さによって給与を決めようという方法が増えてきま
した。これがいわゆる職能給(*)と呼ばれるものです。

 ところがこの職能給も、時代の流れが速くなり、かつて身につけた能力の陳腐化が
急速に進むようになり、「能力」の高さが必ずしも成果に結びつくわけではなくなっ
てきました。これにより成果と職能のミスマッチによる弊害がみられるようになり、
現在はより成果に対する貢献を全面に出し、年俸制に代表されるような各人がその期
に実際に挙げた具体的成果や貢献度に対し、給与を支給するという成果主義的報酬制
度が導入されるようになってきたのです。

(*)職能給については別稿「ゼロから賃金体系を考える−07/職能給とは?」を
参照ください。

<成果主義がうまくいかないケース>
 ところが成果主義を取り入れたものの、うまくいかないケースも少なくありません。
ここでは、うまくいかない成果主義の一例を紹介します。

 まず、人件費を削減することを目的に成果主義を導入するというケースがあります。
人件費を削減することが目的の場合、往々にして社員がやる気をなくす結果に終わっ
てしまいます。このケースでは、なぜ人件費を削減しなくてはならないかを分析し、
どこにその基本的な要因があるのかを明らかにし、それにあった対策を打つべきです。
現在の仕事量に比べ社員数が多いのであればまずは採用抑制などの措置を取ることが
必要ですし、生産性が低く時間外手当の負担が大きいのであれば、そもそも仕事の流
れ自体を見直すことが先決です。

 次に、社員の役割が不明確であるケースがあります。個々の社員に求められる成果
や要望事項を明確に伝えないまま評価を下すと、その評価に対して社員が納得できず
に不満が残ることになります。この場合は社員の役割を明確にし、きちんと伝えるこ
とが必要です。

 さらに、自社の状況や今後の方向性を社員が知らないケースがあります。会社の状
況が社員に伝わっていなければ、共通の認識が持てません。こうした状況では、社長
の望む成果を社員が上げることは難しいでしょう。会社がどこに進もうとしているの
か分からない状況を作っておきながら、「うちの社員はみんなダメだ」というのは社
長の怠慢です。

 ここで紹介したケースの多くは、コミュニケーションが不十分であることに起因す
るものが多くあります。社長と社員のコミュニケーションがうまく取れていないと、
人材の力を引き出すことは出来ません。
 

<成果主義導入における典型的な問題>
 次に、成果主義を導入した場合の典型的な問題点を紹介します。
◇成果主義と結果主義の混同
 社員の努力と結果が結びつかないことは、現実問題として非常に多いため、結果で
判断するとかえって社員のやる気をなくしてしまいます。そもそも社員に結果を問う
ことができるのか。そこから考えることが重要です。自らの責任範囲外のことで評価
をされる社員は確実にやる気をなくします。ですから、結果だけでなくその行動/プ
ロセスを評価することも必要になります。評価指標設定のコツは「結果の1つ前の先
行指標を選ぶこと」です。高い結果を出すためには、高い結果を出す可能性の高い行
動を指標として選び、それを徹底的に行わせることが重要です。

◇財務系の数値(粗利、利益率)を重視しすぎる
 目の前の数字や成果を意識しすぎ、社員が中・長期的な取り組みをしなくなること
があります。よって評価指標は、バランス良く選択することが重要です。

◇目標管理の弊害
 目標の達成度合いを重視しすぎると、社員が困難な目標に取り組んでも達成度合い
が低いと評価が下がるため、チャレンジしなくなるということがあります。目標管理
制度は多くの場合、社員のチャレンジングな取り組みを引き出したいという目的で導
入されることが通常ですが、達成度評価に偏重すると逆の結果を導き出すことがある
ので注意が必要です。また、目標を立て難い職種があるので、目標管理は使える職種
などに限定して使用することが望ましいでしょう。



<報酬制度以前に考えること>
 上記のような問題点などから、成果主義を導入して報酬制度をかえる前には、以下
のような点に留意しなくてはなりません。
 ・手段と目的を混同しないために、何のために制度を変えるのかを考える
 ・危機感を共有するために社員に自社の現状を伝える
 ・社員を迷わせないためにビジョンを明確にする
 ・ビジョンに沿った社員の役割や要望事項を明確にしてそれを伝える
 ・経営計画に沿った組織体制の見直しを行う
 ・人事評価はフィードバックと説明責任がポイントとなることを理解する

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