スマーター・リテイリング・フォーラム 2014
執筆者: staff
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インターネットやスマートデバイスの登場により、現在の流通・小売業はまさにパラダイムシフトともいえる劇的な変化が起こっている。こうした変化の中で企業は、どのような戦略や新しい仕組みを構築していかなければならないのだろうか。日本の流通・小売業が抱える課題とその解決策について、マイクロソフトコーポレーションのデヴィッド・ドブソン氏に話を聞いた。
インターネットの登場以降、流通・小売業界を取り巻く環境は激変しています。 オンラインショッピングがチャネルとして定着する中、新しいアプローチが求められるようになっています。具体的には店舗、オンライン、さらにはモバイルといった多様なチャネルに対応するオムニチャネル戦略が重要なテーマになっているのです。しかし、その実現は言葉でいうほど簡単なことではありません。自社のブランドにかなう品質の商品やサービスそしてカスタマーエクスペリエンスをすべてのチャネルで一貫した形で提供しなければならないからです。 また、新たな市場を目指したグローバルなビジネス展開を図ることも大きな経営課題です。日本でも少子高齢化が切実な問題となっているように、欧州や米国をはじめとした先進国では人口動態をめぐる課題が浮上しており、自国市場だけでは大きく成長することは望めません。このような激しい環境変化の中で今日の流通・小売業が成長を続けていくためには、改めてビジネス全体を“再創造”することが求められているのです。 ビジネスの“再創造”に向け、マイクロソフトではどのような解決策を用意できるのでしょうか。
これまでも当社では、流通・小売業のシステムを長きにわたって支えてきました。とりわけPOSやマーチャンダイズなどに関する基幹系システムにおいては、Windowsベースの製品が数多く使われています。そうしたこれまでの資産やビジネスをきちんと継承しながら、「クラウド」 「ビッグデータ」 「モビリティ」 「ソーシャル」という4つの新しい技術を融合させ、消費者や社会の変化への対応を支援していくことがマイクロソフトのスタンスです。 既存システム資産と新しい技術、その両方を統合的に提供できることが我々の強みなのです。 クラウドを例にとって説明しましょう。現段階での流通・小売業におけるクラウド利用は、メールやグループウエアなどオフィス業務の生産性向上にとどまっていることが多く、ビジネスのコアであるPOSやマーチャンダイズといった領域のシステムはほとんどオンプレミス(自社保有)で運用されています。こうした状況に対しマイクロソフトならコア業務のクラウドへの移行はもちろん、オンプレミスとクラウドを適材適所に使い分けるハイブリッド環境への移行も含め、お客様の置かれた環境にあわせた最適なパスを提示することが可能です。 マイクロソフトの支援によって成果をあげた具体的な事例について教えてください。 それでは、世界各地にスーパーマーケットチェーンを展開する、フランスの大手流通・小売業カルフール(Carrefour)の事例を紹介しましょう。従来同社では店舗ごと、国ごとに様々なシステムをバラバラに運用していましたが、マイクロソフトの基盤技術やアプリケーションを使ってすべてのシステムの統合化を実現しています。
これにより同社では、様々な新しい取り組みが可能になりました。その1つが「Carrefour Drive」というシステムです。このシステムではお客様がオンライン上で注文し、クルマで店舗に行って商品を受け取る、あるいは自宅に配送してもらうといった選択を、その日の自分の行動予定などに照らして自由に行えるようになっています。つまり新しい顧客体験を提供できるようになったわけです。 ただし、このシステムでメリットがあるのはお客様だけではありません。通常、オンラインショップでは大規模な倉庫が必要になりますが、カルフールでは各地にある店舗を倉庫代わりにそのまま使えるようになりました。これはコスト削減だけではなく、オンラインショップとの差別化要素にもなります。このようなケースは、いま流通・小売業に求められているオムニチャネル戦略の実現に向けて大きなヒントになるのではないでしょうか。 最後に日本の流通・小売業に向けたメッセージをお願いします。 今後もマイクロソフトは日本の流通・小売業のビジネスや業務を理解した上で、積極的な取り組みを進めていきます。その一環として、2月26日にクラウドデータセンターを日本にオープンしました。そうしたファシリティや新しい技術を最大限に活用しながら、さらなる付加価値の提供を目指していきたいと考えています。早速、流通・小売業者は勿論、日本の大手SIパートナーやISVパートナー、業界標準化団体Smarter Retailing Forumがクラウドを活用した新たな取組を開始しています。是非、ご期待いただきたいと思います。 モバイルデバイスやソーシャルメディアの普及による顧客行動の変化、ビジネスのグローバル化の進展など、流通・小売業はいま大きな変革期に直面している。これに対し今後どのような取り組みが求められるのか。そのヒントを探るため開催された本フォーラムでは、国内外の先進流通企業の成功事例や現在の流通ビジネスを支える最新テクノロジーなど、幅広いテーマが議論された。今後取り組むべきイノベーションの大きなヒントがここにあります。 流通・小売業の革新と再創造を支えるパートナー各社の取り組み日本国内においても多くの企業が、クラウドやビッグデータといったテクノロジーを活用したイノベーションを推進させ、実際に効果を得ている企業も少なくない。その背景にはイノベーションをサポートする情報基盤や、業界標準仕様、ソリューションの存在が大きいはずだ。大きな変革期を迎えている流通・小売業界をサポートする日本の有力パートナー4社の担当者が、今後の流通・小売業を支える各社の取り組みについて語った。 |